ベトナム労働法の改正(1)
ベトナムの国会は、2019年11月20日付で改正労働法45/2019/QH14を可決し、2021年1月1日から施行されます。現行法規である10/2012/QH13(2012年法)との違いを中心に、この改正労働法について何回かに分けて説明します。
労働契約
1)労働契約の定義
現行法では、「賃金が支給される仕事、労働条件、労使関係における当事者各々の権利と義務に関する被雇用者と雇用者との間の合意」と定義されていましたが(2012年法15条)、改正法では、上記以外に「両当事者が異なる名称による合意をしたが、その内容が報酬、賃金を得られる業務および一方当事者の管理、運営、監察に関する表現であれば、それは労働契約と看倣される」(改正法13条)と定義されています。
2)労働契約の形式
現行法では、3か月未満の一時的な仕事は口頭での契約締結も認められますが、それ以外は、労働契約は文書によって締結とされていました。(2012年法16条)
改正法では、一部例外はありますが、1か月未満の契約は口頭での契約締結が認められます。また、電子的方式による契約締結も可能となりました。(改正法14条)
3)労働契約の種類
現行法では、労働契約は下記3つの種類があります。(2012年法22条)
◇無期限労働契約(期限を定めない契約)
◇有期限労働契約(12か月から36か月までの期間を定めた契約)
◇季節的な業務または特定業務のための12か月未満の労働契約
改正法では、労働契約は下記2つの種類となり、季節的な業務または特定業務のための12か月未満の労働契約は削除されました。(改正法20条)
◇無期限労働契約(期限を定めない契約)
◇有期限労働契約(36か月までの期間を定めた契約)
4)有期限契約満了後の労働契約
有期限契約満了後30日以内に新しい労働契約を締結する必要があります。この期間を過ぎ、まだ新しい労働契約を締結していない場合、既存の契約は無期限労働契約となります。
現行法では、有期限契約満了から新しい労働契約を締結するまでの期間についての定めがありませんでしたが(2012年法20条)、改正法では、「新しい労働契約を締結するまでの間は、両当事者の権利、義務および利益は従前に締結した契約に従う」(改正法20条)とされています。
5)試用期間
現行法では、「試用に合意した場合は、両当事者は試用契約を締結できる」とされています。(2012年法26条)
改正法では、「労働契約に試用の内容を規定することを合意する。または試用労働契約書締結によって試用に関して合意することができる」と定められています。(改正法24条)
また、改正法で、新たに、企業管理者の試用期間が追加されました。管理者の試用期間は最長180日まで認められます。(改正法25条)
6)被雇用者の一方的な契約解除
現行法では、被雇用者が労働契約書を一方的に解除するための条件が定められていますが(2012年法37条)、改正法では、その条件のうち「自身または家族が困苦な状況におり、契約履行の継続が不可能になる」が削除され、事前に通知することで、理由に関係なく一方的な契約解除が可能となりました。(改正法35条)
◇無期限労働契約 少なくても45日前までに通知
◇12か月から36か月までの有期限労働契約 少なくても30日前
◇12か月未満の有期限労働契約 少なくても3営業日前
7)雇用者の一方的な契約解除
被雇用者が労働契約書を一方的に解除する場合、条件を満たす必要がありますが、この条件が改正されています。
現行法の「被雇用者が頻繁に労働契約で定めた業務を遂行しない場合」(2012年法38条)が改正法では、「労働者が、労働契約に従って、使用者規則における業務完成水準評価基準に従って確定される業務を常時完成させない」に変更されました。(改正法36条)
また、改正法では新たに「労働者が、自らの意思で、5日以上連続で正当な理由なく仕事をしない」および「労働者が、本法16条2項の規定に従った誠実な情報を提供せず、労働者の採用に影響を与える」が追加されました。(改正法36条)
改正法16条で、労働契約締結時に、被雇用者および雇用者がそれぞれ提供しなければいけない情報が規定されており、2項では、労働者は、「氏名、生年月日、性別、居住地、学問水準、職業能力水準、健康状態の確認、および使用者が要求する労働契約締結に直接関連するその他の問題に関する情報を使用者に対して誠実に提供しなければいけない」と定められています。